新型コロナで世界の売春婦が泣いている(スペイン編)

新型コロナウイルスは人々の命を危機にさらすだけでなく、世界の経済の動きを鈍化させ貧困を加速させています。

他人事とは思えない感染者の拡大、そして生死を意識した完全予防対策、未曽有の出来事に飲まれた世界で、世界の弱者は声にならない悲鳴を上げているのです。

 

今回はその多くが貧困層に属する風俗産業とコロナウイルス、筆者が滞在するスペインを例に取り今の風俗産業について考察していきたいと思います。

 

フランス国境近くにある世界の売春のメッカとコロナウイルス

日本でも多くの風俗店が営業を自粛したり、そもそも女性キャストが自宅に引き籠って出勤できないと苦悩に喘ぐ店舗が多いと聞きます。

 

しかし世界の風俗事情はもう少し事情が異なります。日本以上に貧富の差がクッキリ、生きていくため、祖国の家族に送金するため裸一貫で働く彼女達の今をカタルーニャ州の北部、フランス国境の風俗街ラジョンケラを例に取り考察していきたいと思います。

 

保証を受けられない世界の性労働者

スペインでは合法に売春することができ、特にフランス国境の小さな街ラジョンケラは売春の街として知られています。

一般住民からしたら売春という形容が付くなんて、不名誉だと騒ぎ立てる者もいますが、それで街が潤っているのも事実。ルーマニアやイタリアなどのラテン諸国、フランスやウクライナなどから国を跨いで、ガラガラ一つで一攫千金を夢見る女性が国境沿いの街を目指すのです。

 

しかし3月下旬からその小さな街はゾンビが住んでいるような生気のない街になってしまいました。そう新型コロナウイルスがスペインで爆増し、スペインが非常事態宣言を宣言し自宅待機を要請したことが原因です。スーパー、パン屋、薬局に病院などの社会活動に必要不可欠な業種以外の仕事は一切禁止され、勿論性のハケ口である性風俗店も一斉封鎖。ラジョンケラにある欧州1の声も出ているクラブパラダイスも売春施設は3月3週目にはネオンサインを消し、ひっそりとシャッターを閉めるしか選択肢はありませんでした。

 

ヨーロッパ一大きな売春クラブに関しても同様で、ERTEと呼ばれる一時休業補償制度を国に申請しました。つまりは従業員70名余りが、一時解雇状態になると同時に国からの失業手当を受け取れる制度です。(この場合雇用主はいくつかの条件下で、従業員への給与支払いを免除されます。一時解雇なので当然ですが、期間が終われば従業員を再度雇用する義務があります。)

 

最低限の給与がその月収額、雇用体系、家族構成などから算出され国により保証されるわけですが、その対象者はつまりレストランやチェックイン・アウト業務やマーケティング等に従事する内勤スタッフのみ。

つまりはそこで働く女性たちはERTEの対象外、クラブ内に同じく住いを構える彼女達は、行く先を失ってしまったのです。

 

帰るお金もないから路上売春をするしかない

ラジョンケラだけでなく、マドリードやバルセロナなどで身体と若さを武器に売春業に従事する者は、ほとんどが東欧や貧しい西欧国家、アフリカ諸国の女性です。その多くがEU国内における労働ビザを要していない為、国からの制度を申請できません。

 

つまり彼女達の殆どはブラックの状態で働いている為、社会保険にも加入できず、クラブ内に居住し性労働に従事していたものは、一定期間後にゴージャスなセックスルームから追い出され、ロードサイド売春をする選択肢しか残されていないのです。

ある者は近郊の街、ダリの生まれ故郷として知られるフィゲラスに短期滞在する女性もいます。

しかし多くの女性たちは生きていくだけに必要なものをスーツケースに詰め込み、スペインとフランスの国境の道路脇のパラソルの下、いつくるか分からない数少ない長距離トラックの運転手に投げキスをするのです。

 

静寂に包まれた工業地帯の道路際には、それは多くの肌色をした売春婦が並び、まるでマネキンのように硬直しながらも現実と直面しなければならなかったそう。

 

ルーマニア出身の女性はこう回想していました。

 

「出ていくしかないと知って、言葉を失った。

スペイン人は家族の元にフランス人は国境を越えて国に帰ったけれど、私の国はここからは通すぎる。

だから私は空を見ているの、だって何をどうしていいか分からないから。」

 

そしてそんな彼女達の面倒を見ているのは、クラブ職員であったお世話係の女性。生きていく為に必要な食事を提供してくれる、それが出稼ぎ性労働者が唯一手にすることができる恩恵なのです。

 

パンデミックだから出来る生き方と蔓延る魔の手

ラジョンケラにおける女性のリアルは、世界の風俗産業でも氷山の一角の出来事です。どの国も似たような状況に追いやられ、生きる為の最低限のセーフティーネットすら享受できていないのです。

 

しかしそれでもメゲナイのが女性、ここではパンデミックを逆手に取った女性たちの生をテーマにお話を続けていきたいと思います。

 

隠れ置屋は違法に営業継続中

ラジョンケラのような広大な風俗街は合法的に大きな娼館を有していますが、スペインにおける風俗形態はクラブやバー形態だけではありません。

つまり日本でも見られるようなマンションの一室を改築して女性を選びサービスを受けるタイプの置屋も多く存在しています。

 

卑猥な画像をプリントした置屋の名刺が車のウィンドガラスに挟まれ、マニュキアで塗られた呼び鈴を押して玄関ドアを開けてもらい、マンションに入室して女の子を選ぶ形態といえばわかりやすいですね。

 

基本この手の置屋は違法なところが多く、パンデミックにおける営業自粛が続く中もこのマンション売春は3月、4月中も営業を続けていました。3月半ばの時点でマンションの置屋の80%が営業を続けていることが発覚し、中にはクラブオーナーの男性が場所をマンションに変えて営業を続けるところもあったそうです。

 

オンラインセックスにホットチャットに夢中

このような未曽有の事態において一番困るのがどうやって日銭を稼いでいけるか。

身体と身体をぶつけてダイレクトに稼ぐことができなくなり、大きな店のバックアップを無くした売春婦は働く場所、自分に値札をつける場所を、SNSそしてアプリケーションなどに移したのです。

 

つまりは卑猥な動画や写真を思い切りツイッター等に貼り、自身の境遇を悲劇的に語りながら、出来うるサービスをツラツラと書き連ねる。

 

「ホットなオンラインセックス、巨乳マミーと最高のひと時を過ごすタイミングがやってきた!」

 

「バイブにディルドを用意して、疑似セックスをしてあげる。最高の電脳エクスタシーは30分〇〇€」

 

などなど、よくもまあこんな卑猥な単語を連呼できるなと感心する位のマーケティング手法を駆使して最後に振込専用のカード画像を添付といった形です。

 

またオンラインセックスやチャットではなく、出来得るサービスをデリヘル方式で提供すると、感染予防対策をガン無視した女性の投稿も少なくありません。

 

当然ですがこれらのエロティックサービスを提供するアプリケーションウェブページには、「Quedate En Casa」、つまりは自宅に留まることを推奨する文言が現れますが、勿論その投稿自体が消されることはありません。これが性的労働者に対する情けなのか職務怠慢なのかは、あなたの解釈次第といったところでしょうか。

 

警察のフリをして動画を巻き上げる男性

スペインだけに限りませんが、この状況において性風俗店で積極的に遊ぶ男性はいません。

むしろその多くはポルノで性欲を発散させるのですが、中にはこの状況をチャンスといわんばかりに悪知恵を働かせる者も……。

 

つまりは簡単な警察手帳、またはそのバッジをコピーし、警官のフリをして、生活に困窮した女性たちを脅して、彼女達から裸の写真や動画を要求するというパターンです。

 

自身をオンラインで売り込む女性は身バレや母国への強制送還を恐れ、このような被害にあっても泣き寝入りをするしかないのです。

 

まとめ

スペインでは段階的に社会活動ができる範囲が広がりつつありますが、それでもまだ風俗産業に以前のような活気が戻るのは時間がかかると予想されます。

 

南米や東欧、アフリカからの移民が非常に多いことからも明確な通り、彼女達がパンデミックにより陥ったことは、くいっぷちを失うことと同時に、祖国送還、医療サービスを享受できない恐怖でした。

 

日本の皆さんがラジョンケラに訪れることはそうそうないと思います。しかしスペインに来ることがあったら、ぜひ今回のコラムを思い出し、そっと外国人労働者の女性たちにチップをはずんであげて頂ければ、幸いです。