風俗で働く女性の中には、借金返済のために風俗嬢になった人もいます。
借金は、自分で作った借金の場合もあれば親が商売に失敗したとか、彼氏が作った借金を肩代わりしたケースもあります。どんな借金でも、返済するのはつらく嫌なものですが、中でも自分に責任のない借金を返済するために、風俗で働くのはもっと嫌なはずです。
それが親が商売に失敗して抱えてしまった借金ならまだ仕方がありませんが、もし彼氏が作った借金だったとしたら。しかも、その彼氏に捨てられたとしたら・・・。もう最悪としか言いようがありません。
さらに、そこにコロナが加わって風俗の仕事が減り、借金が返せなくなったとしたら・・・。そんな地獄のような目に遭った女性が、今回インタビューに応じてくれた由香さん(仮名・24歳)です。
「借金の額はどれくらいですか」
私は率直に聞いてみました。
すると、「600万円です」由香さんは感情のない声で答えました。
「なぜ600万円もの借金を?」
由香さんは彼氏が作った借金だと答えました。
彼氏が事業に失敗して抱えた借金

「ギャンブルか何かの借金ですか」
すると彼女は笑って首を横に振りました。
「ギャンブルで作った借金のほうが、インタビューする人は面白いのでしょうけど、違います」
では何の借金かと尋ねると、彼氏が事業に失敗してできた借金だと答えました。
「IT関係の仕事で、ホームページやECサイトのランディングページを制作する仕事です」と答える由香さん。
しかし、彼女もあまり詳しくは知らないようです。どこから借金したのか聞いてみると、銀行や街金ではなく彼氏の友人から借りたことがわかりました。しかも、借りた相手は由香さんも面識があり、彼氏と3人で飲みに行ったこともあるそうです。
「だったら、別に由香さんが借金を肩代わりする必要はないのでは?」
と聞いたのですが、「でも私は連帯保証人だから」と言うのです。
私は法律に詳しくないので確かなことは言えませんが、どうも由香さんには返済する義務がないように思えて仕方がありません。しかし、由香さんはすべてを私に話しているとは限らないことに、気がつきました。だいたいのことを話しているだけで、真相は少し違うということもあります。たかが記事のインタビューで、しかも初対面の私にすべてを話す必要はないからです。
売れっ子なので順調に返済できていた

「それで、借金はあとどれくらい残ってるんですか?」
「もう半分くらい返せたと思います」
デリヘルを始めてまだ10カ月くらいといいますから、毎月30万円くらい返済してきたことになります。由香さんはAKBの誰かに似たかわいい顔をしているので、きっと指名も多いのでしょう。
「では、あと1年もしないで完済できますね」
「まあ、そうですね」
そう言って、由香さんはちょっと遠くを見るような目をしました。
「ちょっと余計なことを聞いてもいいですか」
私は前置きをして話を続けます。
「はい、なんでしょう」少し緊張した面持ちで、AKBに似た顔が私を見つめます。
「借金を返済したら、デリヘルはやめるのですか」
すると由香さんはちょっと考えて、「しばらく続けると思います」と答えました。
理由は、デリヘルの仕事が合っているからだそうです。
「前は普通の会社でOLをしていたけど、上司や先輩、同僚との人間関係が面倒くさくて」
「なるほど、よくわかります」
人間関係の問題は、どこの職場でもあります。その点、デリヘルは煩わしい人間関係がないから気楽なのだそうです。
「デリヘルを始めたきっかけは彼氏の借金だったけど、おかげで自分に合う仕事が見つかりました」由香さんはそう付け加えました。
「それまで、デリヘルなんて考えたこともなかったから」と由香さん。
確かにそうでしょうね。
普通にOLをしていたら、デリヘルで働いてみようという考えは浮かばないでしょう。
借金の返済も、売れっ子の由香さんにはそれほど苦ではないようです。しかも、借りたのが彼氏の友人だから、利息は免除してもらっていると言うので、私は再度同じことを聞いてみました。「だったら、借金そのものをチャラにしてもらったら?」
「連帯保証人だから無理なんです」
同じ答えが返ってきました。
しかし、「冗談か本気かわからないけど、俺と付き合ってくれたらチャラにしてもいい」と言われたことがあるそうです。
「だったら、そのほうがいいんじゃない?」
と言ったら、「嫌です絶対嫌」という答えが即答で返ってきました。
「そうか、だったら仕方ないね」
私はそう言ってその話はやめました。
肝心の彼氏はどうしているのか聞いてみると、行方がわからないと言います。私は間抜けなことを聞いてしまったと思いました。行方がわかっていれば、由香さんが借金を肩代わりする必要はありませんから。
新型コロナの前は、風俗で順調に稼いで借金を返していたのに、コロナのせいで予定が狂ったと話す由香さん。
「政府の10万円給付ってどうなってるんですかね」
インタビューする私が逆に質問されて、返答に困ってしまいまいた。
「うーん、どうなるんでしょうねえ」
私が苦笑いしていると、「でも、10万円ぽっちもらってもどうにもなりませんけど」由香さんはあきらめ顔で笑いました。売れっ子の由香さんは、コロナが終息したらまた稼げるので、今は収入がなくても切迫した感じはありません。
日本政府はアメリカとは大違い

政府は最初30万円給付すると言っていたのを、連立する公明党から10万円給付を迫られ予定を変更しました。
30万円給付は手続きが困難で、しかも給付してもらえる人が少ないから、すぐ一律10万円給付しないと間に合わないというのが公明党の趣旨だったのに、5月半ばを過ぎてもまだ給付されません。
アメリカでは1カ月以上前から、1人当たり国から月に13万円以上の給付があり、州から毎週5万円以上の給付があります。
合計すると毎月40万円近い給付となりますが、アメリカの人口は約3億人です。日本はその半分以下なのに、まだ一度も給付がありません。この違いはいったい何なのか。
国力の違いと言ってしまえばそれまでですが、日本だってずっとGNP世界2位だったわけですから、国力がないわけではありません。要するに、緊急時に国の指導者が、どれだけ的確な判断ができるかということでしょう。アメリカでは、今後1年間毎月40万円近い金額が、国民全員に支給されるようです。
それだけのお金が日本でも支給されれば、由香さんが困ることもないのです。由香さんは売れっ子なのでかなり稼いでいたようですが、それでもコロナの影響で3月は収入が半分以下になり、4月はゼロ、5月もおそらくゼロになるでしょう。少しは貯えがあるものの、この状態が続くと持ちこたえられないのは、他の風俗嬢と同じです。私が取材した中では由香さんは恵まれたほうでしたが、それでもコロナの影響を受けた風俗嬢の1人であることに変わりはありません。